「採用では、会社のことを魅力的に見せたい」
採用担当者として、このように考えるのは自然なことだと思います。
候補者に入社してほしい。会社の良さを知ってほしい。他社の内定と迷っているなら、最後の一押しをしたい。
その気持ちが強いほど、次のような言葉を使いたくなります。
- 入社後は、大きな仕事をお任せします
- 自由に意思決定できる環境です
- 経営に近い立場で働けます
- すぐに中心メンバーとして活躍できます
どれも、言い過ぎではないかもしれません。
ただし、まだ決まっていないことや、条件のある話を決まったことのように伝えると、候補者がイメージする仕事と、入社後の仕事にギャップが生まれます。
本記事では、会社を良く見せることが、なぜ入社後のすれ違いにつながるのかを説明します。
1. 話を大きくすることの誤解とは?
「話を大きくする」と聞くと、事実ではないことを伝えるイメージがあると思います。
しかし、採用活動では、嘘をついていなくても、結果として候補者へ違う印象を与えることがあります。
例えば、会社としては、将来その人に新しい事業を任せたいと考えていたとします。
オファーレターに、
入社後は、新規事業の責任者として活躍していただきます。
と書けば、候補者は、入社後すぐに責任者として仕事を始めると受け取ります。
実際には、最初の半年は既存事業を担当し、その後の状況を見て役割を決める予定かもしれません。
会社としては、将来への期待を伝えたつもりでも、候補者は、決まっている仕事として受け取っています。
話を大きくすることは、誤解を生むきっかけになりやすいのです。
2. 会社の意図することと、候補者の解釈のズレ
会社は、候補者に魅力を感じてもらうために、魅力的な言葉を考えがちです。
しかし、候補者にとってオファーレターは、入社を意思決定するための情報です。
そのため、書かれている言葉を、以下のように解釈しがちです。
- 「自由に任せます」なら、自分で決められる
- 「経営に近い」なら、社長や役員と仕事をする
- 「中心メンバー」なら、大切な意思決定に参加できる
- 「新規事業を任せる」なら、その仕事を担当できる
候補者は、そのイメージをもとに、今の会社を辞めるか、他社の内定を断るかを決めています。
入社後に「まだ任せられない」「実際は上司の承認が必要」「その事業は延期になった」と分かれば、候補者はどう感じるでしょうか。
仕事内容が変わったこと以上に、入社前に聞いていた話を信じられなくなることが問題です。
良く見せるために使った言葉は、入社した後、会社への信頼を失う可能性を抱えます。
3. 良い面だけを伝えると、候補者は正しく意思決定できない
採用活動では、会社の良い面だけを伝えがちです。
ただし、候補者が知りたいのは、会社の良いところだけではありません。
- 今、組織が困っていること
- 入社後、最初に任される仕事
- 自分で決められる範囲
- まだ決まっていないこと
- 仕事を進める上で難しいこと
こうした情報も含めて、自分に合う会社かを考えます。
例えば、「自由に意思決定できます」とだけ伝えるより、次のように書く方が、入社後の姿をイメージできます。
担当するお客様への提案内容は、ご自身で考えて進められます。
一方で、料金の変更や新しい商品の導入は、上司と相談して決めていただきます。
魅力的な一言にまとめるより、自分で決められることと、相談が必要なことを分けています。
候補者に入社してほしいからこそ、良い面だけで意思決定させないことが大切です。
4. 「決まっていること」と「期待していること」を分ける
オファーレターに会社の期待を書く際には、次の三つを分けて伝えます。
- 決まっていること
入社日、給与、配属先、最初に担当する仕事などです。
- 今、予定していること
今後任せたい仕事や、会社が考えている役割です。変更の可能性があることも伝えます。
- 本人に期待していること
面接で評価した経験を、どの場面で生かしてほしいのかを伝えます。
例えば、次のように書きます。
入社後は、まず既存のお客様を担当していただきます。
その後は、半年を目安に仕事の状況を話し合い、新規事業への参加もお願いしたいと考えています。
現時点では予定のため、役割を決める際は改めて相談します。
これなら、会社の期待を伝えながら、まだ決まっていないことも正直に伝えられます。
候補者の気持ちを動かすために必要なのは、今分かっていることを、話を大きくせず、候補者が判断できる形で伝えることです。
まとめ:良く見せるより、入社後も信じてもらえる言葉を使う
候補者に入社してほしいと思うほど、会社の魅力を、良い言葉で伝えたくなります。
しかし、オファーレターに書いた言葉は、候補者にとって、候補者目線で解釈されます。
まだ決まっていないことを決定事項のように伝えたり、条件のある話から条件を外したりすると、入社後に「聞いていた話と違う」というすれ違いが起こります。
大切なのは、会社を良く見せることではありません。
決まっていること、今後の予定、本人への期待を、分けて伝えること。その方が、候補者は納得して意思決定できます。
オファーレターは、入社後も会社を信じてもらうための大事なツールです。
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